FUK 福祉×AI

障害福祉のDX|国の方針と無料で使える支援窓口

公開
2026-09-01
執筆
株式会社visum
読了目安
6分
障害福祉のDX|国の方針と無料で使える支援窓口

この記事でわかること

  • 国のKPIと現在地は32.3%
  • 記録・文書作成が最優先の理由
  • 無料で使える相談窓口と補助金

障害福祉分野のDXは、国が数値目標を持って推進しています。厚生労働省の資料によれば、ICT活用等により業務量の縮減を行う事業所の割合を2029年に90%以上にする目標が設定されています。

現状は32.3%です。3分の2の事業所が、まだ取り組んでいません。裏を返せば、いま着手すれば早いほうに入ります。

この記事では厚生労働省の資料をもとに、どの業務から手をつけるか、使える支援制度は何かを整理します。

本記事は2026年9月時点で公開されている資料に基づきます。制度は改定されるため、申請前に自治体へご確認ください。

まず確認する4項目

費用をかける前に確認できることがあります。

# 確認項目 確認先
1 都道府県に無料の相談窓口があるか 自治体の障害福祉担当課
2 記録・文書作成にどれだけ時間がかかっているか 自事業所で計測
3 標準様式等への対応が済んでいるか 令和8年4月から基本原則化
4 使える補助金があるか 自治体・国の各制度

1を知らない事業者が多いところです。専門家の助言を無料で受けられる自治体があります。

国が示している方向と現在地

2025年から2029年が「省力化投資集中期間」とされています。

厚生労働省は令和7年6月、障害福祉分野の省力化投資促進プランを公表しました。4つのKPIが設定されています。

項目 現状 2026年 2029年
ICT活用等により業務量の縮減を行う事業所 32.3% 50% 90%以上
都道府県ワンストップ窓口設置数 4 10以上 47
有給休暇が取得しやすい環境整備を行う事業所 80.9% 85% 95%以上
資格取得や専門性向上の支援を行う事業所 76.5% 85% 95%以上

背景にあるのは人材確保の問題です。同資料では、障害福祉分野でも有効求人倍率が相対的に高い水準で推移し、サービス利用者数が増加する中で人材確保が喫緊の課題である、とされています。

令和8年4月から手続の様式が変わった

制度面の変更で、事業者に直接影響するものがあります。

指定申請関連文書と報酬請求関連文書について、標準様式および標準添付書類の使用が基本原則化されました。令和7年3月に関係府省令等が改正され、令和8年4月からの施行とされています。

さらに、事業者と自治体の間の手続に関するシステムについて、令和9年度中を目途に実現する方向で検討が進んでいます。紙の様式を前提とした業務は、今後さらに減っていきます。

テレワークの扱いも明確化された

制度上、認められる範囲が示されています。

令和6年度の報酬改定で、管理者の管理業務について、支障が生じない範囲でテレワークが可能であることが示されました。管理者以外の職種についても、直接処遇業務を除き、利用者の処遇に支障が生じない範囲で可能とされています。

どの業務から手をつけるか

記録・文書作成が最優先です。

厚生労働省は障害福祉分野の代表的な業務を10に整理し、それぞれの省力化の取組を評価する基準を作っています。

そのうち「記録・文書作成・報酬請求」について、取組の目安が2段階で示されています。

段階 取組の内容
ICTソフトの導入 記録から報酬請求、データ活用まで一気通貫のシステム
さらに進んだ段階 AIを活用した音声による情報の入力、情報の転記や実績の入力の効率化

国の資料に「AIを活用した音声による情報の入力」が明記されています。 記録業務の音声入力は、方向性として示されているものです。

削減された時間は直接支援に回っている

見守りロボットを導入した障害者支援施設のタイムスタディ調査の結果が公表されています。

項目 変化
業務全体 60.2分/日 削減
巡回・移動 25.6分/日 削減
記録・文書作成・連絡調整等 117.4分/日 削減
移動・移乗・体位変換/排泄介助・支援 64.9分/日 増加

注目すべきは最後の行です。間接業務が減った分、利用者への直接支援の時間が増えています。

DXの効果を「職員を減らせる」と捉えると現場の反発を招きます。削減された時間を何に使うかを先に決めておくほうが、導入は進めやすくなります。

職員間の連絡調整も対象

インカムやビジネスチャットの導入も、10業務のひとつに挙げられています。

さらに進んだ段階の取組も示されています。職員に個別に指示していたものを、全職員への双方向の情報共有に切り替えるという方法です。これにより間接業務の時間を削減できるとされています。

使える支援制度と相談窓口

費用が理由で踏み切れない場合、確認する価値のある制度があります。

補助金・助成金

厚生労働省の資料では、以下が挙げられています。

  • 障害福祉分野の介護テクノロジー導入支援事業
  • 障害福祉人材確保・職場環境改善等事業
  • 障害福祉分野における小規模事業所の協働化モデル事業
  • 障害者就労施設における生産活動の効率化に資するICT機器等の導入事業

加えて、業種横断的な制度としてIT導入補助金、働き方改革推進支援助成金、業務改善助成金の活用が可能とされ、活用事例の収集と周知が進められています。

なおIT導入補助金は現在デジタル化・AI導入補助金に名称変更されています。

なお就労継続支援A型の生産活動について、中小企業省力化投資補助金の対象であることを明確化する方向とされていますが、資料上は調整中との記載です。確定情報ではない点にご注意ください。

補助率や上限額は制度と年度によって異なります。詳細は自治体の担当課でご確認ください。

★無料で相談できる窓口がある

これが最も見落とされている支援です。

一部の自治体が、障害福祉分野の生産性向上に関する相談窓口を設けています。厚生労働省の資料に挙げられている例です。

自治体 内容
北海道 無料。セミナーと個別相談。令和6年度は29事業所が利用
宮城県 無料。アドバイザー派遣による支援を3回程度
東京都 無料。聴取から提案まで最大5回の個別支援
長野県 相談対応に加え、専門家派遣による継続的な支援

資料に挙がっているのは例であり、他の自治体にも同様の窓口がある可能性があります。まず自治体の障害福祉担当課に確認してください。

国は都道府県のワンストップ窓口を2029年までに47に増やす目標を掲げています。今後さらに増えます。

また一般社団法人全国介護事業者連盟が、加盟事業所向けに「DXなんでも相談窓口」を無料で開設しています。相談内容の約半数は「DXの進め方を知りたい」といった漠然としたものだとされています。具体的な計画がなくても相談できます。

生成AIをどう位置づけるか

記録業務との相性が良い領域です。

厚生労働省の資料には、就労継続支援B型を運営する事業者の生成AI活用事例が掲載されています。支援者側の取組として、以下が挙げられています。

  • 業務マニュアルを読み込ませて「AI支援員」を作り、簡単な質問対応を任せる
  • 面談や電話、ケース会議の音声を録音するだけで支援記録を自動生成する
  • 記録作業の時間をなくし、面談や支援の時間を増やす

同じ事例では、障害のある方自身が生成AIを使う取組も紹介されています。作業マニュアルをひらがなに変換して働く、といった使い方です。

ただし個人情報の扱いを先に決める

支援記録には要配慮個人情報が含まれます。

障害に関する情報は個人情報保護法上の要配慮個人情報にあたり、通常の個人情報より慎重な扱いが求められます。外部のAIサービスに入力する場合、利用目的の範囲内か、本人の同意の範囲に含まれるかの確認が必要になります。

この点の詳細は、就労継続支援B型の業務効率化とAI活用の順序で扱っています。個人情報を含まない業務から着手する順序をおすすめしています。

何から始めるか

  1. 自治体に無料の相談窓口があるか確認する(費用ゼロで始められる)
  2. 記録・文書作成にかかっている時間を1〜2週間計測する
  3. 標準様式等への対応状況を確認する
  4. 使える補助金を自治体に確認する
  5. 削減できた時間を何に使うかを先に決める

5を飛ばさないでください。 目的が「職員削減」だと受け取られると、現場の協力が得られません。

当社も就労継続支援B型事業所を運営する事業者として、制度要件の確認は運用上の前提にしています。


参考

以下はすべて2026年9月1日に確認しました。制度は改定される場合があります。

CONSULTATION

自社で同じことができるか、無料で確認できます

株式会社visumは、自社の就労継続支援B型事業所ウェリットで実際にAIを運用しています。記事で触れた進め方が御社の業務に当てはまるかを、現状の作業内容をうかがったうえでお答えします。

無料相談を申し込む

オンライン30分/営業日2日以内に返信