AIC AI導入・活用

生成AIと著作権|侵害になる条件と業務での対応

公開
2026-08-31
執筆
株式会社visum
読了目安
6分
生成AIと著作権|侵害になる条件と業務での対応

この記事でわかること

  • 侵害になる2つの条件と作風の扱い
  • 生成と利用で判断が変わる理由
  • 業務で取るべき具体的な対応

生成AIで作ったものが著作権侵害になるかは、類似性と依拠性の両方があるかで判断されます。片方だけでは侵害になりません。作風が似ているだけなら侵害にはあたりません。

ただし生成AIには特有の問題があります。利用者が元の作品を知らなくても、侵害になることがあります。学習データを経由して似たものが出てくるためです。

この記事では文化庁の資料をもとに、業務で生成AIを使う場合に確認すべきことを整理します。

本記事は文化庁が2024年に公表した資料に基づきます。当社は法律事務所ではないため、個別の判断については専門家にご相談ください。

まず確認する4項目

社内で生成AIを使っているなら、以下を確認してください。

# 確認項目 判断のポイント
1 利用しているサービスの規約を読んだか 他人の著作物の入力を禁止している場合がある
2 生成物を社外に出しているか 社内利用と公開で判断が変わる
3 プロンプトに固有名詞を入れていないか 作品名やキャラクター名は依拠性の手がかりになる
4 社内ルールを決めているか 文化庁が策定を推奨している

侵害になる条件は2つある

類似性と依拠性の両方がそろって、はじめて著作権侵害になります。

文化庁の「AIと著作権に関する考え方」では、次のように定義されています。

要件 内容
類似性 既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができること
依拠性 既存の著作物に接して、これを自らの作品の中に用いること

この判断基準は、人が作ったかAIが作ったかで変わりません。 通常の創作活動と同じ物差しが使われます。

作風が似ているだけでは侵害にならない

類似性の程度は段階的に判断されます。

状態 類似性
完全一致(デッドコピー) あり
創作的表現が一部共通 あり
創作的でない表現が共通 なし
アイデア(作風等)のみ共通 なし

「あの作家風のイラスト」といった作風の共通だけでは、類似性は認められません。

ただし文化庁は、アイデアと創作的表現の区別は個別具体的な事案に応じて判断されるとしています。線引きが明確に決まっているわけではありません。

生成AI特有の落とし穴

知らなくても侵害になることがあります。

文化庁の資料には、次のように書かれています。

生成AIを利用する場合、仕組み上、学習データに含まれる既存の著作物と類似した生成物が生成されることがある。また、生成AIを利用しない場合と異なり、AI利用者が既存の著作物を認識していなくても、生成・利用が著作権侵害となることがある

通常の創作なら「その作品を知らなかった」で依拠性が否定される場面でも、生成AIでは学習データ経由で類似物が出てくる可能性があります。

「見たことがない作品だから大丈夫」とは言えません。

生成した時点と、使った時点で判断が変わる

見落とされやすい点です。

段階 適用されうる例外
生成するだけ 私的使用目的の複製(著作権法30条1項)/検討過程における利用(同30条の3)/教育機関での利用(同35条)
公開・配布する これらの範囲外になる場合が多い

社内の検討段階で画像を生成する行為は、権利制限の範囲に収まることがあります。しかし、その画像を自社サイトやSNSに載せる行為は別です。

「作るのは問題なかった」と「使っても問題ない」は違います。

プロンプトの書き方が依拠性に影響する

文化庁は、依拠性を推認させる間接事実として次を挙げています。

  • 既存の著作物そのものを入力した場合(画像を読み込ませる等)
  • 既存の著作物の題号(タイトル)、キャラクター名などの特定の固有名詞を入力した場合

つまり「〇〇(作品名)風に」「〇〇(キャラクター名)のような」といった指示は、その作品を知っていた証拠として扱われうるということです。

社内ルールを作るなら、この点は明文化しておく価値があります。

業務利用者が取るべき8つの対応

文化庁は「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」で、業務利用者向けの項目を示しています。

# 内容
1 利用する生成AIの情報確認(仕組み・学習済みモデル・利用規約・従業員への著作権教育)
2 侵害への予防措置と、起きた場合の対応の検討
3 入力が「非享受目的」の要件を満たすか確認
4 生成と利用で判断が異なることに留意
5 利用前に、既存の著作物と類似していないか確認
6 関係者へのAI利用の説明
7 生成に用いたプロンプト等、生成過程を確認できる状態の確保
8 生成AIの仕組みについての情報提供

実務で効くのは5と7

5の確認は、インターネット検索で足ります。 文化庁も「インターネット検索(文章検索・画像検索)の活用など」と例示しています。画像なら画像検索、文章なら特徴的なフレーズで検索する。それだけでも、明らかな類似は見つかります。

7のプロンプト記録は、後から効いてきます。 依拠性がないことを説明する材料になるためです。どんな指示で生成したかを残しておけば、「特定の作品を狙ったものではない」と示せます。

生成物をそのまま保存するだけでなく、プロンプトも一緒に残す運用にしてください。

確認しても防ぎきれない場合がある

類似確認には限界があります。

インターネット検索で見つかるのは、公開されていて検索にかかる作品だけです。未公開の作品や、検索に出てこない作品との類似は、この方法では発見できません。

また文化庁の資料でも、チェックリストの実施が免責を意味しないことが明記されています。確認したから安全、とは言い切れません。

だからこそ、確認と記録の両方が必要になります。確認で明らかな類似を避け、記録で「意図的に狙ったものではない」と説明できる状態にする。この2段構えが現実的な対応です。

従業員への教育も項目に入っている

1の中に「従業員等に対する適切な著作権教育」が含まれています。

文化庁が挙げている誤解の例は、生成物が既存の著作物を侵害するかという問題と、生成物に著作権が発生するかという問題の混同です。この2つは別の話です。

社内で生成AIを使っているなら、この区別だけでも共有しておく価値があります。プロンプトの記録についてはプロンプトの書き方でも扱っています。

責任を負うのは誰か

原則として、生成した人か、生成物を使った人です。

文化庁の資料では、AI生成物による著作権侵害の責任は、原則として物理的に生成AIを利用し生成を行った者、または生成物を利用した者が負うとされています。

ただし一定の場合には、AIの開発者や提供者も責任を負うことがあります。判断は、利用行為の目的や態様、関与の内容や程度といった事情を考慮して行われます。

「サービス提供者が悪い」で済む話ではありません。 使う側の責任が原則です。

チェックリストを守れば免責、ではない

文化庁自身が明記している点なので、そのまま引用します。

チェックリストの各方策は、これらを全て記載どおりに実施しなければ直ちに法的責任が生じるといったことを意味しない。逆に、これらを全て実施すれば法的責任を何ら問われないといったことを意味するものでもない。資料にはそう書かれています。

チェックリストは免罪符ではなく、リスクを下げるための方策です。この点は誤解されやすいところです。

何から始めるか

社内で生成AIを使っているなら、次の順序が現実的です。

  1. 利用しているサービスの規約を読む(他人の著作物の入力を禁止していないか)
  2. 公開する生成物について、利用前の類似確認をルール化する
  3. プロンプトの記録を残す運用にする
  4. 上記を社内ルールとして文書化する

1から3までなら、大きな仕組みを作らなくても始められます。

なお文化庁が公表しているのは「考え方」であり、法律そのものではありません。また同資料の公表時点では、生成AIと著作権に関する判例の蓄積がないとされていました。個別の判断が必要な場面では、専門家にご相談ください。

当社もAI導入支援を行う事業者として、社内ルールの整備は導入検討の前提にしています。


参考

以下はすべて2026年8月31日に確認しました。制度や解釈は変更される場合があります。

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